本を読むことは好きだけれど、人に本をおすすめするのは難しい。
そんな悩みを持つ方は少なくありません。そしてそれは、本を扱うプロも同じく抱えるささやかな悩みでした。
今回お話を伺ったのは、埼玉の南浦和で書店「ゆとぴやぶっくす」を営む栃原さん。
長年会社員として働いた後、コロナ禍をきっかけに「人生で一番好きな本屋をやりたい」と独立し、2022年にご自身の書店をオープンされました。
現在はチャプターズの選書マイスター養成講座の上級合格の経験を活かし、お店でパーソナル選書もされている栃原さん。
受講のきっかけから取得後のお店での変化まで、お話を伺いました。

Instagramで見つけた選書マイスター
── 選書マイスター養成講座を知ったきっかけを教えてください。
Instagramで広告が流れてきたのがきっかけです。「こんな講座があるんだ」と思って興味を持ちました。
書店ってどうしても夏は暑くて、人通りも少なくなるので比較的時間に余裕ができるんです。その時間をスキルアップに使いたいなと思っていました。
例年は本を読んだり、新しい知識をインプットしたりすることが多かったのですが、せっかくなら新しいことに挑戦してみようと思い、受講を決めました。

人に決められた29冊を読む体験
── 選書リスト29冊を見た時はどう思いましたか?
普段から本は読むので、冊数に対してそこまで抵抗はありませんでした。
実際に読んでみると、選書リストの中に以前読んだことがある本も入っていて。終盤に差し掛かったあたりから「あ、これ読んだことある!」と思い出した作品もあったりして笑。意外と忘れているものですね。
普段は自分で選ぶ本ばかりなので、人に選んでもらった本をまとめて読む体験はとても新鮮でした。
── 初級から上級へは最初から決めていたんですか?
はい。最初から上級まで取得したいと思っていたので、初級取得のあと迷わず上級へ進みました。
初級講座の中には本に関する基礎知識を学ぶパートもあったのですが、本屋としては当たり前に知っている内容でも、「こういうことが読書初心者の方にとっては新鮮な学びになるんだな」と感じました。
6月頃に上級を申し込んで試験は9月中だったので、ほぼ3ヶ月で上級まで取得しました。
「読みやすい本」がわかるようになった
── 受講を通して読書への向き合い方に変化はありましたか?
かなりありました。
一番大きかったのは、自分が本を苦手な人の気持ちをあまり理解できていなかったことに気づいたことです。選書リストを読んでいく中で、「読みやすい本ってこういうことか!」と腹落ちする瞬間がたくさんあったんです。
チャプターズが掲げる選書マイスターのコンセプトは「久しぶりに読書をする方にとって楽しい本」だと思うのですが、選書リスト29冊全体を通じて、題材がキャッチーだったり、物語の流れがわかりやすかったりと、「読みやすさ」についてしっかり考えられていることが伝わってきました。
文体の難しさや物語の進み方、テーマの入りやすさなど、自分では当たり前になっていた部分を改めて考える機会になり、私自身読書初心者の方に本をおすすめする時の視点が変わったと思います。

印象に残った『神様たちの遊ぶ庭』
── 特に印象に残った作品はありますか?
宮下奈都さんの『神様たちの遊ぶ庭』です。
作品としての魅力はもちろん、読んでいる途中からこの本をおすすめしたい人の顔がどんどん浮かんできたんです。地方移住、子育て、大自然の中での暮らしなど、いろいろな切り口で誰かに届けられる本だなと思い、「選書すやすい本ってこういうことなんだな」というのを感じた一冊ですね。

実際に選書マイスター取得後、お店で選書をした際にもこの本をおすすめしました。
その方は地方移住を控えていたのですが、後日「背中を押してもらえました」と言ってくださったんです。とても嬉しかったです。
さらにその方がお友達を連れて再来店してくださったりして、本を通じたつながりを感じる出来事になりました。
選書マイスター上級取得後、お店に訪れた変化
── 上級取得後、一番変わったことは何ですか?
やっぱり選書ができるようになった今が一番楽しいですね。
人に本をおすすめすることへの苦手意識も減って、以前よりも自信を持って提案できるようになったと思いますし、仕事に活きている実感もあります。
選書を受けてくださった方は、リピーターになってくださることが多いんですよ。
選書が気になって初めて予約をしてお店を訪れてくださって、本を読み終わったあとにまた来店してくれる。
おすすめした本をまとめて購入してくださる方もいますし、ほぼ100%の方が1冊は買って帰ってくださいます。お客様の読書サイクルの中に、自分のお店が入っている感覚があって、それがとても嬉しいですね。
売上の面で劇的に変わったわけではありませんが、「このお店を目指して来てくださる方」が増えたり、平日のご来店がゆるやかに増えたことは大きな変化でした。
選書マイスター、書店を営む人にもお薦めしたい理由
── 本読みや書店主にも役立つ講座だと思いますか?
すごく役立つと思います。むしろ本屋さんはもっと受けた方がいいと思いました。
例えば「選書しています」と店内のポスターやSNSで伝えるだけで、お客様が話しかけやすくなるんです。本屋さんって忙しそうに見えるじゃないですか。それに、本屋でゼロから会話を生み出すって案外難しいと思うのですが、選書があることでお客様とのコミュニケーションが増えます。
どんな本が好きなのか、どんな人なのかを知るきっかけにもなりますし、リピーターさんにもつながるのが嬉しいです。
人と関わる仕事をする人の武器になる、選書マイスター。
── 最後に、選書マイスターの受講はどんな方におすすめですか?
私のように個人で本屋をやっている方にはもちろんおすすめです。
それ以外にも、美容師さんやネイリストさんのように、一対一でお客様と向き合う仕事をしている方にも向いていると思います。
本を通して相手の価値観や興味を知ることができますし、会話のきっかけにもなります。人と関わる仕事をしている方にとっては、とても良い武器になると思います。
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