Chapter 1

ページ数： 272ページ
読了しやすさ： ★★★★☆
癒し度： ★★☆☆☆

＜あらすじ＞
満員電車や日常のすれ違いをきっかけに、7人の男女の視点から小さな奇跡が繋がっていく連作短編集。
いつもの日常の景色が、少しだけ“違って”見える瞬間を描く。

＜おすすめポイント＞
この本を手にすると、「日常」はこんなにも不思議で、美しい瞬間をもっているのかと思わずにはいられません。
通勤ラッシュ、混雑したホーム、隣に立つ人の小さな仕草――見逃しがちな場面が、7人の視点を通すことで“奇跡”へと変わっていきます。

章ごとのテンポがよく、短編的に読めるためリズムを崩さず最後まで進めるのも魅力。電車通勤のお供に、これ以上マッチする本はそうそう見当たらないでしょう。

普段は気づかない“ささやかな奇跡”が連鎖していく構成は、読み終えたあとに周囲を見渡す目も少し変えてくれるはず。選書として、このふと目が覚めるような感覚を皆さんと共有したいと思いました。

眠い朝、ちょっと疲れた朝に開けば、「世界はまだまだ捨てたものじゃない」と思わせてくれる一冊です。
今日も元気にいってらっしゃいの気持ちで、本をお届けします。

ページ数： 236ページ
読了しやすさ： ★★★★☆
癒し度： ★★★★★

＜あらすじ＞
仕事と偽り毎週カフェに通う妻、そこに集う居場所を探す常連たち。
居場所を求める人々を、美味しいコーヒーとスコーン、そしてとっておきの絵本でやさしく包む物語。

＜おすすめポイント＞
安心してページがめくれるのに、次の展開が待ち遠しい。
優しいトーンなのに、読後の満足感はしっかり残る。

この塩梅って案外難しいのですが、出会ってしまいました！今年文庫新刊として発売したばかりの大人向けのほっこり小説です。

毎週金曜日、仕事と偽って出かける妻と、彼女の小さな変化に気づいた夫。
読書の楽しみをとっておくために詳しくは語りませんが、その秘密の行き先は街の片隅にひっそりと佇むカフェです。読書中、まるで自分の日常にもサードプレースができたような心地よさがありました。

相手を思いやる気持ちは不器用でもきっと届く。そして、言葉が足りないときこそ本の力を借りてみるのもいい。

“言葉で励ますよりも、1冊の本がその人の心にスッと入ることがある”（本文より引用）

本当にその通りですよね。伝えづらい感謝や愛情も、恐れず言葉にしたいものです。

本好きさん、カフェ好きさんにとっておきの読書時間を約束してくれる一冊。次の週末昼下がりは、本を持ってカフェにお出かけしてみませんか。

ページ数： 313ページ
読みやすさ： ★★★☆☆
癒し度： ★★★★★

＜あらすじ＞
江戸っ子だってぐっすり眠りたい！

心と体がほっこりする養生所を舞台に、不眠の悩みを抱える人々が癒されていく、眠りをめぐるやさしい物語。

＜おすすめポイント＞
ベッドサイドに置きたくなる、素敵な一冊を見つけました。
江戸時代を舞台に、眠りを専門に診る診療所を営む医者とその妹が主人公の物語です。

診療所を訪れるのは、それぞれ異なる悩みを抱えながら、眠れぬ夜に苦しむ人々。そんな彼らを、風変わりな医師と癒し系の猫がお出迎えします。続編も出ている人気作は、これまで多くの現代人の眠れぬ夜に寄り添ってきた作品なのだなと感じます。

時代小説に馴染みのない方でも楽しめる軽やかさがあり、随所に挟まれた江戸の睡眠文化の小話も必見。
知識としても面白く、物語の余韻をさらに深めてくれます。

読み終えたあと、猫の体温を思わせる温かな安心感が心に残る一冊。
どうか今夜、あなたがぐっすり眠れますように。