“BLUE RAIN”
ページ数:240ページ
ジャンル:エッセイ集
読了しやすさ:★★★★
弱いまま強くあるということ
たとえ癒しがたい哀しみを抱えていても、傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷の周りをそっとなぞること。過去の傷から逃れられないとしても、好奇の目からは隠し、それでも恥じずに、傷とともにその後を生きつづけること―。
トラウマ研究の第一人者による深く沁みとおるエッセイ。
〈おすすめポイント〉
人生において、つらいことはないほうがいいでしょうか。つらいことが起きてしまったときはなるべく早く忘れ、傷がなかったかのようにふるまうことがいいのでしょうか。そうではなく、傷をそっとなぞり、見つめ、ともにその後を生きていく、というのもひとつの生き方かもしれません。
本書は精神科の医師でありトラウマの研究者でもある著者が、ボストン、沖縄、ブエノスアイレス、バリ、金沢、と旅をしながら、『心の傷』について水の中にもぐるように、ゆっくりと考えを深めていく1冊です。
まるで詩のように美しい文章は読んでいるだけで心が落ち着き、物憂げなこの季節にぴったりです。
推薦文寄稿:蟹ブックス 書店主 花田菜々子
“BLUE RAIN”
ページ数:272ページ
ジャンル:長編小説
読了しやすさ:★★★★★
おじいさんの家で過ごした日々。それは、ぼくにとって唯一無二の帰る場所だ。ぼくは時おり、あの頃のことを丁寧に思い出す。ぼくはいつだって戻ることができる。あの、はじまりの夏に――。
おとなになってゆく少年の姿をやさしくすこやかに描きあげた、感動作。
〈おすすめポイント〉
児童文学の名作として長く愛され、国語のテストの問題文として採用されることも多いというこの作品。ですがほんとうにこの物語を必要としているのは大人ではないかと感じさせてくれるような、静かで深い感動があります。
人生でたった一度きりのかけがえのない夏。
派手な事件は何も起こりませんが、自然の中でのなつかしい生活、はじめての友人との出会い、悲しみから立ち直り自分の人生を少しずつ取り戻していく主人公の姿……すべてが美しくて心が洗い流されます。
日々に少しお疲れ気味の人や、心のきらめきを探している人にもおすすめしたい本。
推薦文寄稿:蟹ブックス 書店主 花田菜々子
“BLUE RAIN”
ページ数:260ページ
ジャンル:長編小説(海外文学)
読了しやすさ:★★★★
長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に侵された老人は、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。
真実の愛の姿を美しく爽やかに描いて、痛いほどの感動を与える物語。
〈おすすめポイント〉
愛する妻に先立たれた老人の余生を描いた作品。
この作品の良さはたくさんあるのですが、「死」をテーマにしていながらも悲観的すぎず、穏やかな雰囲気で日々を淡々と綴られている点が最大の魅力です。
主人公の彼を一言で表現するならば、頑固だけど実は優しいおじいちゃん。
子供たちからの過剰すぎる心配を鬱陶しいと感じながらも、これまでの人生の奇跡を振り返り感謝し、残された短い時間の中で悔いの残らぬよう前向きに生きようとする姿に心がじんとなります。
恋愛とはまた違う、こんなにもあたたかな感情を誰かに注げることができたのなら…。
愛するものを真っ直ぐに表現する美しさが素晴らしい作品です。
また人に対するの愛だけでなく、農園を営む主人公の植物への愛の描写も鮮やかで、読者の肺の奥までその香りが伝わってきます。
作品の雰囲気としては、ディズニー映画『カールじいさんの空飛ぶ家』のような、しっとりとした寂しさが漂う中、愛する人のため冒険に出るワクワクを感じられるような。
これからの将来にモヤッとした暗さを抱える方に、手に取っていただきたい一作。
“BLUE RAIN”
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