“ありがとう”
ページ数:330ページ
読了しやすさ:★★★★
ありがとうを伝えたくなる度: ★★★★★
いつも身近で支えてくれる人へ「ありがとう」を──。
なんて、なんて穏やかな手で心を刺してくるんだろう。父の死につづき母まで亡くしてしまった主人公。大学を辞め、途方に暮れて歩いた商店街で、あるささやかな奇跡が起こり……。
前を向いて進みはじめたわずかな一歩一歩を、彼のまわりの人々はちゃんと見ている。人間ひとりきりになろうと、人とかかわらずに生きてはいけない。あなたにもきっと、誰かに助けてもらった記憶があるのでは。
ありがとうの気持ちは、相手に伝えたら消えてなくなるものじゃない。それは発した自分自身のなかにも残って、誰かにやさしくする原動力にもなる。
ほんの少しの手助けでいいなら自分にもできるかもしれない、踏み出してみようかな──そう思わせてくれる素敵な本です。
ずっと謙虚に暮らしてきた主人公が、最後の最後でやっとたどり着く決断に、ファンファーレが鳴り響く。この結末をあなたにも届けたい。
推薦文寄稿: TSUTAYA中万々店 山中由貴
“ありがとう”
ページ数:197ページ(短歌なので、忙しい方・読書が久しぶりの方もアペロに参加しやすい作品です)
読了しやすさ:★★★★★
ありがとうを伝えたくなる度: ★★★
1年間頑張った自分自身へ「ありがとう」を──。
26年という短い生涯を駆け抜けた歌人による、うつくしい短歌集。一首一首、思いがけないことばの羅列で、わたしたちの感情をゆらめかせます。
彼はいったいどんな瞳でものごとを観察していたのだろう。たった31字のことばで捕まえる、世界の切れ端。それはきっとあなたの新しい細胞となって、日々を生きるための解像度を上げてくれるでしょう。
ユーモラスでもあり、かなしくもあり、きらきらしてもいて。あなたが、あなただけのために、ひとりぼっちの喜びをあじわう時間が、ときには甘美なごほうびになる。
一気に読むのはもったいない。
口のなかの飴玉をころがすくらいの速度で、ことばから生まれる音や、においや、感情に触れてみてほしい。そして浮かんだイメージを誰かに話したくなったら、あなたにできるかぎりのていねいさで、それを掬ってほしい。
推薦文寄稿: TSUTAYA中万々店 山中由貴
“ありがとう”
ページ数:341ページ
読みやすさ:★★★
ありがとうを伝えたくなる度:★★★★★
家族や、今は亡き大切な人へ「ありがとう」を──。
とつぜん、妻が帰らぬ人となった。そのとき男は泣けなかった。なぜなら彼は──。
そこからはじまるゆるやかな感情再生ストーリー。
情けない主人公をときには可笑しく思い、何やってるんだと思い、自己愛人間めと思いながら、自分でないと言い切れない。
そう、彼の身に起こったできごとは、特別なんかじゃない。
関係に甘えて表現されない感謝や思いやりは、ないのと同じこと。自分だったら、それを怠けたことを、喪くしたあとどれだけ引きずるんだろう。
幾度も自身の身に置きかえて、立ち止まりながらページをめくるような物語です。
テーマは重たいけれど、それでもふしぎと読むのは楽しく、生きていくしぶとさと眩しさに満ちています。
読み終えたら、あまりにもあなたのそばにいることがあたりまえになっている、あなたのいちばん身近な人に、ありがとうと伝えませんか。
推薦文寄稿: TSUTAYA中万々店 山中由貴
“ありがとう”
ページ数:248
読了しやすさ:★★★★
ありがとうを伝えたくなる度:★★★★★
行きつけのお店へ「ありがとう」を──。
これは、かつて実際にあったほんとうのできごと。海を越えてつながった、ある書店と顧客の20年にわたる往復書簡集です。
ウィットやユーモアに富んだ手紙の文章、少しずつふくらんでいく信頼関係と親しみの情、本に頬ずりする姿が思い浮かぶような喜びの描写が、たまらなくほほえましい。
本が好きな人にはわかりすぎるほどわかる、宝物みたいな本なのです。
ああ、こんなふうに、本を愛する同志として、わたしの届けた本がその人の本棚に特別な一冊として差さってくれていたら。
というのは書店員としてのわたしの切な気持ちですが、もしあなたによく立ち寄る本屋さんが、いえ本屋でなくてもいいけれど、あなたをときめかせるお店があるなら、きっとこの本は、あなたとそのお店をもっと深く結びつけるきっかけになることと思います。
推薦文寄稿: TSUTAYA中万々店 山中由貴