“海外暮らしてみた”
ページ数:268ページ
読了しやすさ:★★★★
暮らしてみた度:★★★★
首都ロンドンから電車で1時間。地図上ではロンドンから真下(南東)へ下ると、イギリス屈指の海岸リゾート・ブライトンに到達します。
そんな海街で暮らす、日英夫婦と思春期の1人息子、3人の日常を綴った大人気エッセイが本作です。
ネタバレをせずにこの本を例えるならば、「始まり」。
地元のいわゆる"荒れた"中学へ通う一人息子の日々の生活を通じて見えてくる、ダイバーシティ・格差・政治の問題の数々は、もはや異国の地で暮らす外国人としてではなく、この時代の地球に生きる人類全てに立ちはだかる社会問題ばかりです。
自分自身の無知に立ち尽くしながら、混沌とした課題をまずは知ることから「始める」、夏の、そして未来を生きていくための壮大な宿題をもらうような読書体験は、読み物としての面白さはもちろんのこと、夏の始まりにもぴったりだと感じ選書しました。
海街ですが、さすがイギリス。
陽気なビーチライフとは程遠く、むしろ分厚い雲の下で思い切り哲学を繰り広げます。
2019年の発売後瞬く間にヒットし、数々の書店・文学賞を獲得。チャプターズでタイトルや著者を隠してご紹介するのは野暮かもしれませんが、待望の文庫化です。
読み終え、内省し、そして同じ本を読んだまだ見ぬ誰かと語り合うまで、チャプターズの特徴を存分に利用してぜひ読書を楽しんでくださればと感じます。
“海外暮らしてみた”
ページ数:149ページ
読了しやすさ:★★★★★
暮らしてみた度:★★★
行ったことありますか?グアテマラ。
メキシコのそのまた南、中米に位置する暖かく陽気な国です。
日本で生活していると、「グアテマラ=コーヒー」程度の連想がいっぱいいっぱいですが、本書を読むときっと行きたくなる!
楽しいグアテマラの旅行(というかホームステイ)にご案内です。
疎遠だった破天荒な弟が、ある日突然グアテマラ人と結婚。それならいっちょ行ってみるかと計画した、グアテマラでの半月が描かれたエッセイです。
なんと著者、グアテマラで実の弟と13年ぶりの再会を果たします!
旅のエッセイでありながら、兄弟の在り方や絶妙な家族の距離感も楽しめるのが本作の魅力と言えるでしょう。
我々日本人は、グアテマラに対するイメージが乏しいせいでしょうか。エッセイ冒頭から、知らない国の空港に降り立った時の旅のわくわくをそのまま感じられ、旅好きにはきっと堪らない読書体験になるかと思います。
半月の生活の中で著者が見るもの・触れるもの、表現力豊かな著者によってユーモアたっぷりに伝えてくれるため、旅の疑似体験という意味では今月ピカイチだと思います。
現地のコーヒーを飲んだ著者曰く、グアテマラより日本のコーヒーの方が美味しいとのこと。それを確かめる意味でも行ってみたいものです、グアテマラ。
著者は有名俳優、俳優としての評価はもちろんのこと、本のレビューサイトでも賞賛の嵐!エッセイストとしても実力派のようです。
今月掘り出しものの一冊に出会いたい方は、ぜひこちらを!
“海外暮らしてみた”
ページ数: 306ページ(30ページ程の表題作を読めば、アペロにご参加可能。お忙しい方もぜひ本作を。)
読了しやすさ:★★★★★
暮らしてみた度: ★★★★★
「本で旅する」をテーマにお届けするWorld Map Bookstoreの選書は、今年で3年目を迎えました。そんな中、3年連続で選ばれている、というか選んでしまう著者さんがいます。
その方の作品がこちら、今年も生きたイタリアの旅へ一緒に出かけましょう!
長年ミラノに住み続ける、日本人エッセイストが見つめるイタリアの日常。
カフェで隣り合わせた警官、家探しで出会った大家、移動中の長旅の列車で居合わせた女性...名もなき人々が主人公となる1話完結型のエッセイは、表題作を含む全10のお話で構成されており、その物語はいつも、偶然の出会いから始まります。
著者の持ち前の好奇心とオープンな心こそが引き寄せる、ローカルとの何気ない出会いの数々。それらは連なるとこんなにも美しい小説のような、映画のような、叙情的な作品へと姿を変えてしまうのかと、これが「エッセイ」であることに時々驚きながら読み進めてしまいます。
ファンも多く、これまでイタリアのエッセイを数多く手がけてきた本作の著者ですが、「最初に読むならこの作品がいい!」と現役の書店員さんから伺い今月こちらを選びました。
著者はミラノ在住ですが、シチリアにカラブリアにリグリアに、本作はとにかく忙しく旅程となりますのでご覚悟を。
旅行のお供は、きっとカンパリが似合うでしょう。
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※商品は予告なく入荷する場合がございます。
“海外暮らしてみた”
ページ数:246ページ
読了しやすさ:★★★
暮らしてみた度:★★★★
1970年代末、インターネットのない時代に一人フィンランドの首都・ヘルシンキへ留学した著者の体験談を記したエッセイです。
今でこそ人気の旅先・フィンランドですが、音楽と美術を入り口にフィンランドへ興味を持ち、当時の少ない情報量だけで単身留学を決めた著者は、おそらくかなりの鬼才でしょう。
発売から30年弱が経過した本作ですが、ユーモアや細かい言い回し、全体の文章から漏れ出だす知性は全く色褪せなることがありません。
"人間は大きく二つのグループに分けられ、北を目指す人、南を目指す人がいる。南は生を志向し、北は死を志向する。死と隣り合わせの北だからこそ、生の姿が鮮やかに浮き彫りにされる。"(本作より一部抜粋)
耳がちぎれるほどの極寒の地で、著者はどのように友達を作り、論文を完成させ、語学を習得していったのか。
今月4作品の中で、一番頑張る旅は間違いなくこちら!留学を経験した方には、きっと共感することも強いかと思います。
個人的に注目したのは、文中のところどころに、引用される、杉田玄白「蘭学事始」の抜粋文。
ブログやSNSなど、インスタントに体験共有する術のなかった時代のエッセイだからでしょうか、思いを馳せた先がそのまた昔の江戸時代の蘭学医というのがなんだか粋でおかしくて、本作の読了後思わず「蘭学事始」が積ん読リストに追加されてしまいました。
21世紀のエッセイが並ぶ中、今月唯一、少しビンテージな旅になりそうです。
そういった意味では、ちょっぴりツウなフィンランド旅。
ぜひスマホの電源はOFFでお出かけください。
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