“スタートライン”
"上京"
読了しやすさ:★★★★
おしゃれ度:★★★★★
設定は1980年代、今の5・60代が20代の頃の上京物語です。
当たり前にスマホのない時代設定にギャップはあるものの、読み進めて一番驚いたことは、主人公がとにかくよく歩く!行ったり来たり、待ち合わせなんて会えるだけでもう奇跡。そんな時代が一周回っておしゃれというか、新鮮で目新しく映ります。
初めての東京・ファーストキス・仕事の下積みーー愛知から上京した主人公・久雄の10年と共に、80年代の煌めきに満ちた東京の街を体験しましょう。読後、世代が近いご両親をお持ちの方はぜひこの本を貸してあげるのもいいと思います。
現在品薄で、書店ではなかなか出会えない作品。Chaptersでは4月にご紹介すべく、出版社さんのありったけの在庫を集めました(ありがとうございます)!ご用意の数量は他作品より少ないためご希望の方はお早めに。
“スタートライン”
"結婚式"
読了しやすさ:★★★★★
ハラハラドキドキ度:★★★★★
初めにお伝えしなくてはいけません。“結婚”がテーマだからと言って、分かりやすいロマンスを想像するとちょっぴり裏切られます。本書は、結婚式当日の式場を舞台にウェディングプランナー・カップル・出席者などなど様々な目線からストーリーが展開される、オムニバスストーリー。三谷幸喜さんの映画作品のような、と言うとイメージが湧きやすいでしょうか。
400ページを超える分厚さに凝縮されたのは、たった1日。
同日に執り行われる4つの結婚式を軸に、全く違った人生や感情が朝からせわしなく行き交います。ラブストーリーの要素は薄めなので、どちらかというとサスペンスやハラハラドキドキする展開が好きな方にぜひ読んでいただきたいです。
現代を代表する有名女性作家による本作。
読みやすいので、分厚い本が苦手な方も安心して選んで頂ける、一気読みにぴったりの長編小説です。
“スタートライン”
"お引越し"
読了しやすさ:★★★★
春に読みたい度:★★★★★
春に似合う本、では断トツの1位だと思います。
お引越しの予定がなくてもきっと楽しめる、今にぴったりの一作はこちら。
主人公は、ある日突然亡くなった父の遺産である古いアパートを引き継ぎ、大家さんになることを決意。早期リタイアという大胆な決断の末に始まった住み込みの大家さん体験、ちょっと不思議な住人たちとふれあいながら、なんでもない毎日が進みます。
年を重ねる中で感じる、弱腰な自分・変化に怯える自分をとてもリアルに、そして明るく描いているのが本作の魅力。読者の現在の年齢や性別に関わらず、誰しも心当たりのある大人独特の心の揺らぎがしみじみと押し寄せます。
今年の春、様々な書店で平積み展開を見かけ重版もかかるなど、少し話題の作品です。アパートの庭先に植わった桃の花が伝える季節の移り変わりと共に、春の読書をお楽しみください。
“スタートライン”
"廃校を迎える小学校"
読了しやすさ:★★★★
ほのぼの度:★★★★★
奈良県十津川村。
自然豊かな村に建つ廃校寸前の小学校が、本作の舞台となります。小学校の先生や村人と一緒に、1年間の子供たちの成長をゆっくり見つめていきましょう。
田舎暮らしの温かさが詰め込まれたこの物語、共感できる子供時代を過ごされた方がいたら、ただただ羨ましい限りです。小学校に特別な思い出がない方は、この機会に一緒に思い出をぬり替えてもいいと思います。(推薦者は)読み終えてただ一言、「こんな小学生時代を送りたかった」!
本作の先生たちのやりとりの中で、『教師に向いている人は自分が教師に向いていないと考える人』という一文が登場しますが、まさに、子供たちだけでなく大人にもそれぞれフォーカスが当たり繰り広げられるドラマこそ、この作品の面白さだと感じます。
スタートラインから始まる他の3作と違い、本作は卒業に向けての物語。
今年なにかの卒業を迎える方は、特に共感を覚える作品かもしれません。